【インタビュー フィリピンでの船員供給事業】
保有船415隻の強み生かす
ドーレ・シーフロント・クルーイング(マニラ)社長 アイリス・バギラット氏、ドーレ・グループオーナー代表 トーレ・ヘンリクセン氏。

As posted by The Japan Maritime Daily on November 22, 2023

独ドーレ・グループはコンテナ船や不定期船など合計約415隻の世界最大級の船隊を誇る。同グループは船舶管理、用船、船舶金融、保険、乗組員管理、ロジスティクスなど包括的なサービスを提供する世界有数の海事サービス・プロバイダー。ハンブルクに本社を置き、20以上の事業所と6800人以上の従業員を擁するグローバルネットワークを展開する。同グループで船員供給業を手がける比ドーレ・シーフロント・クルーイング(本社・マニラ)社長のアイリス・バギラット氏とドーレ・グループオーナー代表のトーレ・ヘンリクセン氏に、フィリピンでの船員供給事業について聞いた。

(聞き手 山本裕史)

――ドーレ・シーフロントがマニラに設立された経緯を聞きたい。

「ドーレ・シーフロントは2009年に設立された。同社はドーレが所有・管理する船舶にフィリピン人船員を派遣することに特化した認可船員派遣会社、そして海事産業のグローバルプレーヤーへと発展した」

「14年、われわれは国際的な船主やオペレーター(運航船社)にもサービスを提供するようになった。私たちの使命は、ドーレのネットワークを超えて、パートナーである国際的な船主や経営者の多様なニーズに対応できるよう、高い資格を持つフィリピン人船員の自国籍プールをつくることである」

「海運の専門家として有名なドーレ・グループの一員として、ドーレ・シーフロントは豊富なリソースを活用している。この連携により、私たちは国際的なお客さまに対し、『頼りになる船員派遣会社』として位置付けられ、最適な船員を迅速かつ効率的に提供することができている」

■約3000人船員供給
――現在、ドーレ・シーフロントはドーレ・グループを含めて何人の船員を供給しているか。

「23年、ドーレ・シーフロントは約3000人の船員を供給し、約170隻の船舶管理を担当。大きな節目を迎えた。供給先や管理船舶はドーレ・グループの船舶と、さまざまな第三者の船主や管理者の船舶で構成されている。海事産業での当社の広範な影響力と能力を示している」

「特にサードパーティーの顧客セグメントで、当社のポートフォリオは目覚しい成長を遂げている。外部顧客へのサービスを開始して以来、管理する船舶数と船員数は一貫して増加傾向にある」

「この成長は、この分野での当社の専門性を際立たせるだけでなく、業界が当社のサービスに寄せる信頼と信用を反映している。ドーレ・シーフロントの海事産業のダイナミックなニーズへの適応能力により、当社は重要なプレーヤーとして位置付けられ、その範囲と影響力を継続的に拡大している」

――ドーレ・シーフロントは、大型コンテナ船やドライ船のほか、どのような船種に対応しているか。

「ドーレ・シーフロントはコンテナ船、ドライ船、多目的・重量物船、タンカー、オフショア、ヨットなど、広範な船種に多様な船員を提供することが可能である」

■自国船員を育成
――ドーレ・シーフロントの船員が他の船員派遣会社と比較して優れている点はどこか。

「われわれは自国出身者の育成に力を入れている。私たちが最も重視しているのは、パートナーの船舶管理会社や船主のために自国の船員を育てることにある。乗船中から意図して人材を育てることで、船員派遣プロセスの持続可能性を信じている。このアプローチは、熟練した人材の安定供給を保証するだけでなく、深い忠誠心とコミットメントを育むと考えている」

「2点目は継続的改善への献身にある。ドーレ・シーフロントでは、常に方法と実践を進化させ、改善している。この卓越性へのコミットメントにより、私たちは常に業界標準の最前線に立ち、最高のサービスと専門知識をお客さまに提供が可能になる」

「3点目として、フィリピン国内はもとより、国際的な舞台でも私たちの存在感を強く示しているのは、業界との強固な関係のおかげ。このつながりにより、最新のトレンドや変化を常に把握し、迅速かつ効率的に対応することができる」

――ドーレ・シーフロントはフィリピン政府とも強いつながりを持っている。

「そうだ。フィリピン政府とは強固な関係を持つ。当社はフィリピン政府との強固な関係を維持し、規制の順守と国の海事政策との整合性を確保している。このような関係は業務を円滑に進め、高水準のサービスを維持する上で極めて重要である」

「さらに、船員やその家族との関係の育成という点も指摘しておきたい。ドーレ・シーフロントでは、船員だけでなく、その家族にも配慮している。私たちは、乗組員の全体的な幸福と働きがいに、家族のサポートが不可欠な役割を果たしていると考えている。このような関係を育むことで、私たちは船員にとってより総合的で協力的な環境をつくり出し、ひいては彼らのパフォーマンスと忠誠心を高めている」

「船員が単なる労働者ではなく、家族を持つ個人であり、私たちの拡大したコミュニティーの重要な一部であることを認識し、私たちの事業の人間的側面へのコミットメントを強調するものだ」

――日本の船主やオペレーターとどのような取引関係があるか。

「われわれは、日本の海運業界やその関連会社の仲間たちと強固な提携関係を維持している。私たちの目標は、日本の船舶に乗組員を提供することだ。なぜなら、私たちの仕事に対する倫理観や姿勢が、日本の船舶と明確に一致していると確信しているからである。このことは、特にフィリピンのパートナーとの協力関係、特に船員の安全と福祉の共同追求で明らかである」